- 2010年3月4日 15:32
- memo
本が売れるパターンを、経験を踏まえて、書き出してみる。だいたい、大きくわけて3つくらいあり、その3つが絡みあうものを含めて、4パターンあると思っている。その前に売れる本とは、どれくらいの部数を意味するのかにもよるので、ボクなりに定義すると
- 松 5~10万部あたり
- 竹 30~60万部あたり
- 梅 100万部前後
くらいかな。ボクは幸せなことに、松竹梅、どのパターンも編集担当できたので、初動をみるとどれくらい売れるかは、わかるようにはなった。絶対ではないけど。また、技術書とビジネス書あたりしか担当したことがないが、文芸なども同じなのではないかと思う。マンガは違うことだけは、いろいろ聞いて知っているけど、経験していないので本当のところはわからない。で、4パターンを、1つひとつ考えてみる。
1. タイミング
何もしないのに売れていく本のパターンの1つに「タイミング」がある。抽象的だけど「タイミング」としかいえない。最近の例でいれば、TwitterやiPhoneの一部の書籍など。ボクは担当はしていないけど、どれも10万部は超えていない、聞いても、調べてみても。
実用書でいうと、対象となっているモノやコトを利用する人、その内容がどんなものなのか知りたい人が、潜在的に増えている状況があり、じわじわと顕在化してきた「タイミング」と合うと、書籍の内容の優劣に関わらず売れる。いわゆる、アーリーアダプタを超えたあたり。ただ、誰も売れている確実な理由がわからない。雰囲気はわかる。なぜなら増刷しても売れるから。
書籍に限ったことかもしれないが、売れない理由はいくつでも考えられるけど、売れる理由が割とわからない。売れるようにいろいろ手を打っても、売れないときは売れない。でも、タイミングがあえば売れる。手を尽くす尽くさないに関わらず。もちろん、手を尽くすほうが、より売れるのは間違いない。 反対に、どんなに書籍の内容がよく、上手にプロモーションされていても、「タイミング」があわなければ売れない。これも確実に言える。もちろん、ロングテール商品として着実に売れることがある。内容がよければ。でもこれは、気がつけば売れていたパターンであり、「売れているなぁ」と実感するほどの売れ方はしない。
この「タイミング」という不思議なもの。これがわかれば、担当者も苦労はしない。「確率的思考」風にいえば、売れるものに確率的に「絶対なタイミング」はない、ということもわかっている。「タイミング」は、感覚値、経験則なので、まったくロジカルではない。10年以上編集者をやっても、ドンピシャでタイミングがあったのは、2度くらい。いつもタイミングを狙っているけど、打率は悪い。だから出版は水商売だと言われるんだと思う。ほかの業種で同じことをやると、きっと怒られるな。
2. テレビ
ネットでよく取り上げられているものを見ていると、売れてそうだと思う書籍も、実際には、それほど売れてないものもある。反対もある。ただ、テレビで取り上げられると、その効果は、売れ部数となって現れる。最近だと「巻くだけダイエット」。リアル書店、Amazonに関わらず売れている。本を年間10冊以上読む人(1ヶ月に1冊程度、一般的によく読むといわれる人)、世代的にいうと中高年が見るテレビで取り上げられると、格段に売れる。直接書籍を紹介していない場合でも、その話題にまつわる書籍が売れたりする。なんで書籍なのかわかんないけど、とりあえず詳しい内容を知りたいと、書籍を手にとるのだろうか。書店も売れるように並べる。ますます売れる。というフローが出来上がる。
いろいろな人がネットを日常的に使うようになって、加速しているのが「誰それが書籍をテレビで紹介→読んだ→ネットでクチコミ」するパターンではないかと思う。途中の「読んだ」が入らないことも多いけど。
テレビは、あまり見なくなったといわれているけど、2次的に誰もが影響を受けている。自分はテレビは見ないけど、周りの人はきっとテレビを見ていて、友人知人からその本のことを間接的に聞く。自分はテレビは見ないのだけれど、ネットは見ていて、誰かがいい本だとブログに書いていたから買ったというパターン。結構、知らない間に、ボクたちはテレビの影響は受けている。
新聞や雑誌で取り上げられるのも、テレビに近いかもしれないけど、テレビほどの影響力はないと思う。ゼロではないけど、松竹梅の梅ほどの売れる影響力はない。経験的に。具体的に、どんなテレビ番組があるかといえば、ニュースもその1つだけど、定番どころでいえば、「王様のブランチ」の9時半すぎの本のコーナーなんかは、結構影響力があるみたい。経験したからよくわかる。また、対談番組、著者や特定の人物を追っかけたりする番組、クイズ番組なども、書籍の売れ方と連動している感がある。
3. 元々売れてる人が書く
もともと売れっ子の人が書いた本は、初期プロモーションをしなくても、一定数動く。いわゆる指名買い。その初動が各書店に広がり、書店店頭での置かれ方に変化があらわれ、目立つ位置に置かれるようになり、書店店頭で売れている雰囲気づくりが醸し出される。
書いた本人もプロモーションしてくれし、自然と、取り上げるメディアの数、クチコミされる数が増え、きちんとブレイクする売れ方になる。具体的には、発売前に増刷がかかる、発売直後から1週間以内に増刷がかかる、初版の部数より、増刷の部数が多くなるなどなど。 このパターンも、ネットの波及効果、影響がある。
もともと書籍は、ネットと相性がいい。ネットでテキスト(芸能人ブログなどではなく)を読める人は書籍をよく読み、書籍読みリテラシーがある。同じネットでもケータイでのネット文化が違うと思うけど。ケータイで文字を読む人の多くはメールを中心としたコミュケーション目的。その延長線上でケータイを使ってネットを見ているし、PCのブラウザーでテキストを読む人層とは違う。ちなみに、ケータイ小説は、普段書籍を読む層が購入しているわけではないので、これに当てはまらないかな。
4. フルセット
上記の1と2と3が合わさることを、ボクの中では「フルセット」と読んでいる。つまり最強。去年でいえば「1Q84」。事前に何も公表されなかった、プロモーションが効果的だった、販売戦略など、いろいろいわれているけど、「1Q84」は「フルセット」の最たるものだとボクは思っている。100万部売れる本には、最低1と2が必要である。知らない間に100万部売れるものはほとんどない。どこかブレイクするきっかけが、1から3のいずれか、または複数該当している。自分調べだけど。
だらだらと、売れる本のパターンを書いてみた。3つのパターンと、その3つが絡みあうものを含めて4パターンあると思う。これが、e-ink時代になると変わるか。きっと同じはず。人は信頼している人(擬似的でも)から紹介されたものは買うという、人間の心理がある。4パターンも、他者からの影響。「影響力の武器」にも書いてあったかも。
売れない本のパターンを書き出してみようかな。売れない本で、1つだけ確実に言えることがある。編集担当者に情熱がない書籍。これは絶対だな。作った本人が感じるんだもの。でも、情熱だけが溢れんばかりあっても、売れない。
いずれにしても、売れるコンテンツは、編集者にとっての麻薬である。ドーピングしてでも、味わいたい。
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